磁性材料の中には、沢山の向きが揃ったスピン(磁気モーメント)があります。細長い磁性材料を用意し、これの片端に、ギガヘルツ帯の周波数をもった高周波信号を当てると、スピンが歳差運動(倒れかけのコマのように回転する運動)を開始します。このスピンの歳差運動が、磁性材料の端から、もう一方の端に、次々と伝わっていく現象をスピンの波で、「スピン波」と言います。スピンが磁性材料の端から端に、情報を伝えることができるわけです。この細長い磁性材料を極細(ナノあるいはマイクロメートル)にして、スピン波を配線すると、スピン波の回路を作ることができます。このとき、スピンはその場でくるくると回転しているだけなので、電子は流れず、電流は発生していません。このため、電流を原因とする発熱がフリーな新しい次世代情報処理回路が実現できると考えています。これまでに、スピン波NAND、NORなどを開発して、発表しています。今後も、より複雑で、より小型で、より役に立つスピン波デバイスをこれに必要な材料を含めて開発していきます。

スピン波デバイス&スピン制御レーザー(2021年9月10日公開。イノベーションフェア2021 in 東三河にて使用。)